近年注目が集まっているヒト幹細胞化粧品。
市場調査によれば、ヒト幹細胞関連の美容市場は年平均成長率が22%を超えると予測されています。ヒト幹細胞は美容のみならず、整形外科や様々な治療領域でも年々広がりを見せ、これまでの発想にはない治療の実現につながっています。
本記事では、ヒト幹細胞の特性とその効果、さらにそれを利用したスキンケアについて詳しく解説していきます。
目次
1.ヒト幹細胞のメカニズム
1.1幹細胞の定義
1.2幹細胞の役割
1.3皮膚における幹細胞の働き
1.2幹細胞の役割
1.3皮膚における幹細胞の働き
2.幹細胞の種類
2.1胚性幹細胞
2.2誘導多能性幹細胞
2.3脂肪由来幹細胞
2.4歯髄幹細胞
2.2誘導多能性幹細胞
2.3脂肪由来幹細胞
2.4歯髄幹細胞
3.サイトカインとエクソソームの働き
3.1サイトカイン
3.2エクソソーム
3.3番外編 PRP療法
3.2エクソソーム
3.3番外編 PRP療法
4.幹細胞化粧品
4.1幹細胞培養液の特性とメリット
5.幹細胞化粧品を用いたスキンケア
6.まとめ
1.ヒト幹細胞のメカニズム

1.1幹細胞の定義
私たちの身体には様々な細胞がありますが、通常の細胞はその寿命が短く、絶えず入れ替わり続けることが必要です。そのためには失われた細胞を再び生み出して補充する能力が必要です。その役割を果たすのが、幹細胞です。1.2幹細胞の役割
幹細胞には大きく2つの役割の種類があります。一つは、自己複製する能力で、こうした能力を持つ幹細胞を組織幹細胞と呼びます。
組織幹細胞は何にでもなれるのではなく、神経系の組織幹細胞であれば、神経系の細胞にというように役割が決まっています。
もう一つは多能性幹細胞といって、わたしたちのからだのなかにある様々な組織幹細胞も作り出すことができる細胞です。その代表例がIPS細胞やES細胞です。
1.3皮膚における幹細胞の働き
皮膚にも幹細胞は存在しており、具体的には、表皮、真皮にも幹細胞が存在しています。表皮幹細胞は表皮の基底層に位置し、表皮細胞を生成し、皮膚のバリア機能を維持する。
真皮幹細胞は真皮に存在し、コラーゲンやヒアルロン酸など、肌のハリや潤いを保つ成分を生成する、と考えられています。
このように、幹細胞の皮膚における働きは、幹細胞が新しい皮膚細胞を生成し、老化や傷ついた肌を再生する役割を果たすことで、より一層肌の潤いを保ち、肌のバリア機能を強化することが期待されます。
実際に、2016年の研究では、ヒト幹細胞が持つ再生能力が皮膚の修復を促進し、コラーゲン合成を増加させることが示されています。
2.幹細胞の種類
幹細胞にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特徴と用途があります。以下に主な幹細胞の種類を紹介します。2.1胚性幹細胞 (ESC)
ES細胞という名前をお聞きになったことがある方も多いのではないでしょうか。Embryonic Stem Cellの略がES細胞となるわけですが、Embryoとは受精卵(別名:胚)を指します。
ES細胞は発生初期の受精卵の細胞からつくられるため、受精卵に非常に近い能力を持っていて、私たちのからだを構成するあらゆる細胞へと変わることができると考えられています。
京都大学の山中教授らがIPS細胞を発見するまでの間、最も再生医療の領域で中心的な役割を果たしてきた細胞です。
2.2誘導多能性幹細胞 (iPSC)
誘導多能性幹細胞は、成人体細胞(例えば皮膚細胞)を再プログラムして得られる細胞です。これにより、胚性幹細胞と同様に多能性を持つ細胞を生成することが可能になります。皮膚や血液などの体細胞に、特定の因子(リプログラミング因子)を導入することで作られるため、ES細胞と比べると細胞を作るうえでの倫理的なハードルがより低くなる点にメリットがあると考えられています。また、患者由来の細胞を使用することができるので拒絶反応が発生するリスクが少ないと考えられています。
これにより、様々な薬剤開発や疾病モデルの研究、個別化医療への応用が期待されています。
2.3脂肪由来幹細胞 (ASCs)
脂肪組織から採取される幹細胞で、特徴として自己複製能を持つため、再生医療、美容医療の領域で特に注目をされています。その他にも、抗炎症作用、免疫調節作用、再生促進作用に優れています。
損傷した組織の修復や再生を促進する因子を分泌する作用を持つ。
幹細胞化粧品でも多くはこの脂肪由来幹細胞の培養液や培養上清液が含まれているものが最も多いと言われています。
2.4歯髄幹細胞
歯の中にある歯髄から得られる幹細胞で、主に歯の再生や修復に関与します。これらも多能性を持ち、さまざまな細胞に分化する能力があります。歯科医療での再生治療において使用され、特に根管治療や歯の修復において重要な役割を果たします。
3.サイトカインとエクソソームの役割
ヒト幹細胞の働きを理解する上で、重要なポイントが2つあります。それはサイトカインとエクソソームです。

3.1サイトカインの働き
サイトカインは、細胞が分泌するタンパク質で、細胞の増殖、分化、移動、炎症などの調節に重要な役割を果たしています。ヒト幹細胞から放出されるサイトカインは、特に抗炎症作用を持ち、赤ら顔や敏感肌に有効とされています。実際、2021年の論文では、幹細胞由来のサイトカインが炎症を軽減し、肌の回復を促進することが示されています。
3.2エクソソームの特徴
エクソソームは、細胞が分泌する微小な囊胞で、脂質二重膜でできた膜に包まれており、タンパク質やDNA、RNAなどの成分が含まれています。エクソソームは、細胞が必要とする栄養分の供給や、ダメージを受けた部分の修復、さらには免疫応答の調整など、細やかで情報伝達を担う細胞です。
外部リンク:藤田医科大学
真皮幹細胞が分泌するエクソソームの変化が 肌のコラーゲン産生に関わることを発見
このようにサイトカインとエクソソームは構造は異なるものの、細胞から生み出されるもので、それぞれ異なる効果を持っており、様々に活用されています。
3.3 番外編 PRP療法
同じように再生医療の領域で普及しているのがPRP(多血小板血漿)療法です。例えば、転んで膝を擦りむいてしまうと出血しますが、いずれ出血が止まり、かさぶたが形成され、少しずつ修復(治って)されていくのはイメージしやすいでしょう。
この働きを担うのが血小板です。血小板にも先に紹介したサイトカインが含まれており、この機能を利用した治療がPRP療法です。
PRP療法では、患者自身の血液を採取して、遠心分離処理を行い、血小板の濃度を高め、
患者の該当箇所に注入することによって、組織の修復を目指すものです。
再生医療という意味では、幹細胞治療と同じではありますが、血小板が行う働きは再生を促す役割であり、幹細胞は実際に再生を行う役割という点で大きな違いがあります。
4.幹細胞化粧品

いきなりですが、幹細胞化粧品、という表現は正確な表現ではなく、多分に誤解を生じる説明です。
幹細胞の働きは、ここまでの説明で記載した通り、非常に期待できる部分が多いため、幹細胞化粧品と呼ぶことによって幹細胞の機能をスキンケアに応用しているというニュアンスになります。
しかし、実は幹細胞化粧品には幹細胞は一切入っていません。幹細胞を扱うには厳密な審査を受け、国から認定される必要がありますので、化粧品に簡単に組み込めるようなものではないのです。
実際に含まれているのは、幹細胞を培養する際に用いられた「培養液」です。
4.1幹細胞培養液の特性とメリット
ヒト幹細胞は、皮下脂肪組織から採取して培養されることが多く、幹細胞を取り除いた培養液(上清液)には多くの有効成分が含まれています。先に紹介しているサイトカインやエクソソームも細胞から放出されるタンパク質、という記載がある通りで、この培養液の中に含まれています。
幹細胞を培養していた培養液、あるいは培養液上清(上澄み)が含有されているのが幹細胞化粧品ということになります。
一般的には培養液上清の方が、より多くの有効成分が含まれると考えて良いと思いますが、含まれている濃度であったり、様々な違いがあるので、幹細胞化粧品と一言で表すのはかなり困難です。
5.幹細胞化粧品を用いたスキンケア
幹細胞には高い注目が集まっています。実際にルーチンケアに組み込む際の注意点やポイントについて紹介していきます。
個々の肌質に応じたアイテム選定
ヒト幹細胞化粧品を使用する際は、自分の肌質に合った製品を選ぶことが重要です。パッチテストを行うことで、事前に肌の反応を確認し、特に敏感肌やアレルギーのある方は、成分表示をしっかり確認することをお勧めします。信頼できるブランドから購入することも大切です。適切な使用方法
ヒト幹細胞化粧品は、肌の状態を最良に保つためのスキンケアルーチンの一環として使用することが推奨されます。化粧水や美容液は清潔な肌に適切に塗布し、軽くマッサージすることで浸透を促進します。また、定期的に使用することで効果を最大化することが期待できます。6.まとめ
ヒト幹細胞培養上清液を含む化粧品は、これからのスキンケアにおいて重要な役割を果たすことが期待されています。特に敏感肌や赤ら顔に悩む方々にとっても、期待される選択肢の一つとなります。サイトカインやエクソソームの働きを通じて、抗炎症作用や皮膚保護機能を提供し、肌の健康をサポートします。しかし、ヒト幹細胞化粧品であればなんでもいいというわけではなく、これからエビデンスの構築が必要になる部分も多く残されています。
また基本的なスキンケアはこれまで通り必要になり、+αのケアとして注目されていると考えるのが良いでしょう。